出版活動を続けながら、地域の人々や世界の人々と情報と知恵を交換していきたと思っています。梨の木舎らしい日々の思うこと、考えることを発信します。
プロフィール

ミナガちゃん

Author:ミナガちゃん
「梨の木舎通信」へようこそ!日頃思うこと、新刊にまつわるあれこれを発信していきます。

最新トラックバック
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/-- --:-- スポンサー広告 TB(-) CM(-)
梨の木舎通信
2013年12月10日 
新刊『夢三夜』定価:1600円+税 
 
 『夢三夜』をお送りします。著者の飯島勝彦さんは私が生まれた佐久市望月町布施村式部の人です。私が小さかった時、おばあちゃんから、「野沢北高に合格した、あたまのいい人」と聞いていました。実際にお会いしたのは、何十年もたってからのことです。多津江民芸館の集まりで司会をされていました。柔らかい笑顔で、静かに話しをされる方で、「この人があの噂のカツヒコさん」と思ったものでした。

『夢三夜』で、著者は日本の農村がさらされている現実をご自身の体験をもとに描いています。都会で生活するものには、農業がみえません。関心がないとも関心を奪われているとも言えます。私は、都会の空き地を農地にして、都市機能と農地を同心円状につくったらいい。ビルの緑化もすすめ、可能な限り屋上も農地にして、子どもたちに農業をさせる。もちろん大人も。野菜畑が近くに見える環境をつくりだす。生産性が低い産業を、みんなが支えていくことによって、収穫の実感を体験し、採算だけがすべてではないことを身をもって知る。

何よりも食料自給率をあげることができる。世界の自給率をみると、2005年の数値だが、高いところでは、アメリカ123パーセント、カナダ173、フランス129、オーストラリア245(!)。そしてドイツ85、スペイン73、イタリア70、イギリス69、オランダだって62、スイス57。そしてダントツ低いのが、韓国45、日本40。おまけに日本は、たしか半分以上を廃棄している。
 
そうは言ってもねえ、というのが現実? だったら、学校菜園をもっと増やして、近くのお百姓さんに指導してもらう。このくらいはできる、と思いませんか。

 飯島さんの作品に『鬼ヶ島の婆たち』(郷土出版社)があります。産廃ごみ焼却炉の廃炉に敢然と立ち向かった婆たちの実話をもとにしたものでした。
 婆たちは標高1000メートルの山中、自宅から100メートルも離れていないところに造られた産廃ごみ焼却炉の撤去をもとめて闘い、廃炉に成功します。飯島さんたち村の人も水源地とも言える峠に産廃ごみ焼却炉なんてとんでもないと、怒りの声をあげ、署名運動をし、デモで訴えます。

そのころ私は、東京-上田を車で往復していて、現地は私の帰省ルートでした。ある時、森を隠すように、道の谷側に3メーターほどの塀が作られ、木立が切り払われていくのを車の窓からみつけました。
「産廃焼却炉絶対反対!」のたて看板がたてられ、反対運動があると知りました。ある時その娘さんと知り会い、その後また何年かして、彼女の家を訪ねました。廃炉運動を闘ったお母さんは、認知症で伏せていられました。「あがって、あがって」と招じ入れていただき、コーヒーをいれていただき、おしゃべりしました。広い家にねこが何匹も出入りしていました。「山に捨てられているのを、拾って、餌をやっていて、20数匹にも増えてしまった」そうです。

焼却炉が稼動しているとき、煙とともに強烈なにおいがして、障害をもって生まれたねこの赤ちゃんもいたそうです。彼女が育てた豆をもらって帰りました。「鹿がみんな食べてしまって、収量は少ないの」 彼女の収穫の上前を撥ねました。今彼女は果敢に闘った母親を送り、山の中の家で一人暮らしをつづけています。 

飯島さんが、地域の出会いと社会の理不尽ともろもろのことを手元に引き寄せられ、農業の合間に文章にされる。私たちは本と出会い、著者と出会い、本の登場人物と出会う。

本書には、「夢三夜」「てんてん」「前へ」が収められています。「前へ」は、一人の少女の東日本大震災と福島原発事故の体験が描かれます。津波で母親を亡くした少女の気持ちはいかばかりか。父親と離れ住み慣れた町を後にし、見知らぬ場所で暮らすことになる少女の胸のうちを考えます。大人は自分の住むところを自分で決められるけれど、子どもには決めることもできない。母を抱きしめ、さよならということもできずに、ただもう会えないという現実に投げ込まれたのです。

私は、母とのたくさんの時間を与えられました。生まれてから別れのときまで、可愛がられ、里山の畑に連れられていく時には、木立につながれた腰ごに入れられ、山陰(やまかげ)で眠ったそうです。時には「なんてズナイ(これは佐久地方の方言で、意地が悪いというような意味ですが)子だ」と言われ、こちらも「なんといういやな親だ」と思い、何とか早く家から出て行こうと思い、でも帰省してきたときには、「おいしいね」と母の作る散らし寿司を食べ、一緒に旅行し、唱歌を歌い、たまにはビールを飲み、どくだみととうもろこしの毛とクコの葉のお茶を飲み、おにぎりをもって姉と3人で日帰り温泉にゆき……記憶の中にはたくさんの思い出が折りたたまれています。
 少女は母ともう新しい思い出を作ることはできません。あまりにも早い母との別れでした。でもお母さんは、新たな出会いを用意していてくれて、新しい世界が彼女の前に広がっているはず。たぶん、たぶん、彼女は母と一緒に新しい記憶をつくっていくでしょう。亡くなった人はいつもどこに行くときもついていってくれる。何しろとっても軽くなってしまってどこにでも行くことができるのだから。

 12月7日(土)の午後、福島県郡山から黒田節子さんをお招きして、原発事故後、2年9ヵ月たった福島の抱える問題を話していただきました。場所は佐久市教育会館。地元の岩下美智子さん岩下和さんが会をオーガナイズしていただき、50人を越える聴衆が熱心に聞いてくださいました。

放射能による健康被害、進まない廃炉作業、「除染」問題、汚染水問題、子どもたちの甲状腺がん、そして新たに作られようとしている低線量汚染物質の焼却炉の問題。原発事故は数々の問題を引き起こし、解決が見出せません。にもかかわらず、その日の『朝日新聞』は、政府の原発再稼動の方針を伝えました。

その前日、12月6日(金)夜中、特定秘密法案成立。信濃毎日新聞の主筆中馬清福さんは、「この法律を実施させないこと」を呼びかけ、98歳のジャーナリストむのたけじさんは、明日から廃案に向けた運動を始めようと訴えています。
スポンサーサイト
2014/01/27 08:03 新刊紹介 TB(0) CM(0)
検索フォーム
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。