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ミナガちゃん

Author:ミナガちゃん
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帰りの新幹線から見た街

7月4日(日)、碓氷峠を越え、新幹線は大宮を過ぎてまもなく東京駅に着くはず。バシバシと音を立てるほどの、激しい雨が窓ガラスをうち始めた。窓の外の大宮の街は一挙にミルク色に変わっている。
 今朝、望月の多津衛民芸館で東誠子さんからいただいた『私からの伝言』(長野県高齢者生活共同組合編)が膝の上にある。この冊子は戦前・戦中・戦後を生きた信州人へのインタビュー集である。戦争の記憶は、いま窓外を覆うミルク色のカーテンのように日本列島をおおっている。人々は年月を重ねた皮膚の下に、色あせない記憶を抱えもって生きている。彼らとともに、戦争の記憶は否も応もなく消えていくのが宿命かもしれないが、どういうふうにしたら、このかけがえのない記憶を遺すことができるだろうか。あらゆる戦争の記憶こそ、世界遺産の筈--。

 新刊『次世代に語りつぐ生体解剖の記憶――元軍医湯浅謙さんの戦後』小林節子著 定価1700円+税 をお届けします。

 はじめて湯浅さんにお会いしたのは、1985年。教科書に書かれなかったシリーズの3冊目(『ぼくらはアジアで戦争をした』)で、内海愛子さんがインタビューされました。「生体解剖は日常業務だった」と証言されています。
 それから、20年の歳月が流れて、湯浅さんは班忠義著『ガイサンシーとその姉妹たち』(梨の木舎)のなかに再び登場されました。班忠義さんがインタビューしています。班さんは、中国山西省での日本軍の性暴力の問題を追う中で、山西省で日本軍が何をしたのかに行き着きました。内海さんは、加害者の国の側から、班さんは被害者の側の国からそれぞれ明らかにしようとしているのです。
 8月『ガイサンシーとその姉妹たち』は増刷する予定です。読み直していて、あらためて、ガイサンシーの過酷な運命に胸をつかれました。わたしは何を読んでいたのだろう。忘れ去られるのが、本の宿命かもしれないが、あるべきところにこの本はおかれただろうか。班忠義の骨太のメッセージは日本の社会に送られただろうか――人間性を全否定される性暴力を切り返しうけながら、人への深い思いやり、弱いものへの共感共苦を失わなかった人、ガイサンシー。
 ――ちいさな石を置いただけのあなたのお墓はそのままあるだろうか。できることなら、あなたの眠る傍らで、あなたが去った後、この世に遺したもののことを、ひざまづいてあなたにつたえたい。あなたのことを忘れないということを。
 
 湯浅謙さん、私は、あなたにどういう風にむきあえばいいのでしょう。生体解剖は犯罪です。日常とは恐ろしいものです。日常になると、犯罪という認識はなくなるんですね。あなたは、それを私たちに、誡め警告してくれました。山西省で日本軍が行ったことは、手術演習という名の「生体解剖」でした。これは国家の犯罪です。拉致された中国人の男性の体にメスをいれたのは、湯浅さんという個人です。しかし背後にあって、命令を下したのは日本という国家です。国家と個人の際限ない共犯関係。個人が組織のなかに埋没したとき、歴史は力の論理で動いていくということを、わたしたちは学びました。そして命令を拒否することはできなかった…。
 湯浅さん、あなたは自分の身をさらして、国家を告発しているのですね。「わたし」をさらして、次世代に警告をしているのですね。
 韓国ドラマ『IRIS』は、国家への、自分が属した組織への復讐を誓った男の物語です。最初は国家への復讐とうけとりました。国家への復讐というテーマが、韓国ドラマに登場したということがわたしには驚異的でした。(『韓流がつたえる現代韓国』の著者のイ・ヨンチェさん、)エンタテイメントの映像で国家への復讐っていう、テーマありましたか。彼は愛する人を失い(実は生きているのですが)、組織から抹殺されようとし、復讐を決意します。
 彼は、組織の命令によってではなく、自分で考え決定し行動する。自分の判断と肉体で目の前に立ちふさがる難題に立ち向かう。それを助け行動を共にするのが、北朝鮮の諜報部員というのも非現実的ですけれど、統一を願う韓国人の切なる意思がここにこめられているのだと思います。
 つまり湯浅さん、組織の中で組織の命令で動くのではなく自分の頭で決めろと。
 しかし、これは、難しいことです。わたしたちは、小さいころから自分で考えない訓練をさせられているんですから。でも、あなたが、身をさらして警告していることを、著者の小林節子さんは、キャッチし、私たちに投げかけてくれました。小林さんの幼いころの戦争の記憶は、東京空襲のときに幼子や女性、老人の逃げ惑う姿です。それが、中国帰国者との出会いにつながり、日本軍の罪行にゆきつきます。そのまっすぐなボールを、きちんと受け止められますかと、小林さんもわたしに問いかけているのですね?(はたゆみこ)
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2010/07/29 13:27 平和を考える TB(0) CM(0)
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